東南アジア経済を支える「メコン川流域開発計画(GMS)」がASEANの未来を変える!?

東南アジアの主要国を流れASEAN経済を支える大河メコン川。

2015年末のASEAN統合を目前に控え急速な開発が進められています。

今回は、メコン川流域6カ国の開発計画からみる東南アジア経済の将来性について書いてみました。

 

東南アジアのメコン川流域6ヶ国

メコン川流域国とは、「タイ」「カンボジア」「ベトナム」「ミャンマー」「ラオス」の5ヶ国を指し、地政学的に「中国」南部2省(雲南省、江西壮族自治区)を加え、全6ヶ国を指します。

この6ヶ国を人口ベースで見ると実に約3億人!

ASEANの加盟国が10ヶ国(シンガポール、インドネシア、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、タイ、カンボジア、ベトナム、ミャンマー、ラオス)を合わせると2015年には6億人を見込むことからも3億人という規模は東南アジア諸国(ASEAN)の半数を占めています。

また、総面積は約256万8600平方キロメートルと広大です。

しかし、経済規模はまだまだ決して大きくはなく2003年の統計データではありますが、国内総生産(GDP)は約 2261 億 4240 万ドルと小ぶりです。

経済規模という側面から見ると小ぶりですが、6ヶ国合わせて3億人を超える経済圏は特筆すべき事実ですね。

それ以外にも注目を集める理由として、メコン川流域は多様な気候柄、さまざまな地政学的な特徴を持ち、「水資源」「生物」「鉱物資源」など、きわめて巨大な経済的ポテンシャルと開発の将来性が挙げられます。

 

メコン川流域国のインフラ事情

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前回記事にした「ラオス」もそうですが、東南アジア諸国にはまだまだインフラが未整備な国が多く存在します(てか、そんな国ばかりです)。

ASEANの優秀国「タイ」の首都バンコクでさえ夏場などは特に停電をし、バンコクを離れれば未舗装道路は無限に存在しています。

そんな経済インフラの不十分な国々ですが、2015年末の「ASEAN経済統合(AEC)」を目前に控えた今、未発達なインフラ整備の是正になるだろうと大きく注目を集めているのが「メコン川流域開発」なのです。

 

メコン川流域開発計画(GMS)

アジア開発銀行(Asian Development Bank、本部マニラ)がメコン川周辺5ヶ国(中国を入れて6ヶ国)とともに推進している同計画は、インドシナ半島を東西南北に貫く幹線道路を軸に、メコン川流域国の経済インフラを一体的に整備してしまおうという大胆なものになります。

とりわけ、「農業」「エネルギー」「環境」「人材育成」「投資」「電話通信」「観光」「交通インフラ」「運輸・貿易」などの119以上の分野を中心に、地域ないし各国間の総合的な開発を行っています。

分野がかなり広域に及んでいますので、今回は経済面、特に「交通インフラ」をメインに取り上げて記事にしました。

 

最重要課題は「幹線道路」の整備

メコン川流域開発計画において重要な経済面における開発計画は「幹線道路の整備」ですが、下記資料のように大きく3つの回廊が存在します。

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東西経済回廊

1つは、ベトナム中部のダナンからラオスおよびタイを横断してミャンマーのモーラメインまでを結ぶ全長1450キロメートルの回廊。

2006年12月より本格的な開発が開始しましたが、2015年春、ASEAN経済統合よりも少し前に全通する見込みが出てきました。

余談ですが、現在建設中のルートはタイが全面的に支援しており、ミャンマーに多くの製品を送り出すタイにとっては、その恩恵が実に大きいことは言うまでもありませんね。

また、日本政府ないし日系企業も全面的にバックアップしています(詳細は下記をご参照)。

南北経済回廊

そしてもう1つが、中国雲南省の昆明(コンメイ)から南下しラオスまたはミャンマーを経由しタイのチェンライから首都バンコクまでを結ぶ全長2000キロメートルの回廊(東側は昆明からベトナム北部ハノイまで及びます)。

中国と陸続きでタイの主要港まで続くことらから、中国政府が積極的に開発の援助を行っています。

タイ・パタヤ近郊のレムチャバン港(タイ最大の港)からラオスの首都ビエンチャンまで陸路で続いており、将来的には 中国の雲南省まで繋がる予定です。

また、陸路にとどまらず鉄道路を建設中、既に運行をスタートしている箇所もあります。

南部経済回廊

最後は、タイのバンコクからカンボジアのプノンペンを経由してベトナム南部・ホーチミンまでを結ぶ全長1000メートルの回廊。

南部を東西に伸びることから、「第二東西経済回廊」とも言われています。

ただし、現在はカンボジア内にあるメコン川に関しては橋が未完成のため、フェリー(といっても車を5〜6台載せられる程度)を使っての物資輸送となるようです。

橋梁 が完成すると物流も大きく変わりそうですね。

 

東西経済回廊に対する日本の期待

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日本政府も以前から多くの資金を投下してきましたが、直近でも2013年より3年間で6千億円というODA(政府開発援助)あるいは円借款によって全面的に支援することを表明しました。

日本の国際協力機構(JICA)は、特にミャンマー南東部の調査を開始し、将来的な交通・輸送インフラの整備に日本企業を誘致するほか、東南アジアにおける日本の製造業(とりわけタイに集中)の物流網を拡大し、インドやバングラデシュなど新たな消費市場を狙えるキーポイントになると期待を寄せています。

それもそのはず、東西経済回廊が全通すると、輸送時間が飛躍的に短縮(現在海上輸送で3週間→陸送で4日!)され、またタイからミャンマー(その先には海をわたって「インド」市場)あるいはタイから超消費大国「中国」など、今までは難しかったルートが陸路で結ばれることになりますからね。 

ちなみに陸送は海路に比べてコストが1.4倍と高いようですが、長時間かけて行う輸送の際の機会損失を考慮すれば、費用対効果はかなり大きいかと思われます。

 

自然環境保護と流域開発のパラドックス

地域経済と自然環境への配慮は、大きなテーマの1つかと思いますが、このメコン川流域開発計画でもやはりパラドックスが見られます。

メコン川は多様性の宝庫であり、例えば淡水魚(回遊魚など)が生息しています。

また、これらを主食として自給自足の生活を送っている人々もまだまだ多いかと思います。

そういった昔からの環境や生活に配慮せず、例えば電力を賄うためにダムを開発して果たして良いのだろうか・・かといって経済が潤えば地域住民に還元されるわけで・・といった疑問も出てきますよね。

何かを得るには何かを失う必要があるのは事実であり、共存というキレイゴトを決して僕は言う訳ではありません。

いずれにせよ当ブログでは東南アジアを経済的なアプローチで紐解いていますので、今回は「皆さんはどう思われますか?」という疑問符を投げるのみにとどめます。

 

さいごに

メコン川流域の経済規模は一見すると現在は小さく、大したGDPではありません。

しかし、長期的な視点で捉えると「人口3億人」「豊富な資源」「多様な文化」「物流のかなめ」など、きわめて巨大な経済的ポテンシャルと開発の将来性を感じずにはいられません。

もちろん「自然環境への配慮」「商習慣の違い」「流域諸国の利害関係」など問題は山積みですが、日本としてもメコン川流域開発では大きなイニシアティブを握ってもらいたいと切に願っています。

2015年末の東南アジア統合(ASEAN経済統合)を見据えて、今後の動向に大注目な地域の1つですね。

当ブログでも随時、情報発信をしていきます。

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ABOUTこの記事をかいた人

海外ノマドや旅行情報を中心に自身の経験を交えてブログで発信中。カメラやスマホなどのガジェット類も大好き(旅の7つ道具として紹介しています)。また、「タイ」をこよなく愛し1年の半分以上をパタヤとバンコクを中心に暮らしています。嫁はタイ人。